木の家を造っていく事が如何に時代の要請に合った事で有るかを見てきましたが、
ややもすると木は反るとか、木造は地震に弱い、白蟻がつく、腐りやすいと言うような事も良く聞きます。
これも又偏見であります。昔の大工は木の反りを見極めた上で、それをかえって有利な方向にして使いました。
地震にも十分耐えられる事は実証済みです。
鉄は燃えませんので木より強いと思われ勝ちですが、熱に対しては木のほうが遥かに強いのです。
白蟻がつく、確かに白蟻は木を食べますが、別に駆除剤を使わなくても防ぐ事はできます。
木はそんなに柔には出来ていません。特に桧,ヒバ(翌檜、あすひ)と言った木はそれ自身の中に防虫作用
(フィトン・チッド、これは森林浴のもとと考えられている)を持っています。
腐りやすさに於いても木は鉄以上のものでして、アメリカの自由の女神(芯がスチール)は、僅か100年で修理しましたが、東大寺の大仏(芯が木)は未だ修理したと聞きません。
又最近では積層材も作られるようになり、これも優れた材料で有りまして、反りにくい、大断面に使用出来る、といった長所を持っています。
(これも日本は最先進国で有りまして、東大寺を見れば良く分かります。
日本のメーカーが北欧に積層材の研修に行って
「我々は東大寺を見て研究したのですよ」。と言われたと言う笑えないエピソードも有ります)。
其の事から積層材としての木を評価する人もいますが、木はもっともっと素晴らし物で有り、
我々としては自然木の次に利用できる木として積層材も有りますといったぐらいに考えるのが妥当かと思います。
ところで、何故最近の住宅は構造体の如何に関わらず、外見上は同じなのでしょう。
床にはフロアー合板を使い、壁、天井にはビニールクロス張り、
僅かに和室にその違いが見られる程度です。
これでは木造の良さを発揮出来る訳が有りません。
木は本来素材を現す事に依って其の美点を最大限に発揮します。
湿気を吐いたり、吸ったり、木目が我々の目を和ませて安らぎを与えてくれたり、
森林浴の効果をもたらしてくれたりする訳です。
(ラットでの実験では有りますが、コンクリートの中で飼ったものと、
木の箱の中で飼ったものでは、子供の育つ数が違うそうです。勿論木の中で育てる方が良く育つそうです)。
一方、木造住宅の評価の仕方に、柱が無節で有るとか、
天井板や床板がどこそこの銘木で有るとか言った仕方も有ります
(建築のコストを押し上げて、本格木造住宅は良いけれども高く付くという評価のもとになっている)が、私は節が有ってもいいではないか、
傷を恐れる余りに素材の良さを殺してしまう様な塗装をした使い方はする必要はない、
その特質を生かした使い方をするべきで有りそうする事によって安価で良質の木造住宅が出来ると確信しています。
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